of Hydrophilus acuminatus
なぜか水生昆虫がとっても好きでも、ガムシには興味のないひともいます。同じ水生昆虫なのになぜでしょう。
色が地味だから?泳ぎが下手だから?お尻から息を吸わないから?数が多いから?
僕には分かりませんが、なにしろ最高です。
知っているひとは知っているのですが、ガムシはゲンゴロウと違って後肢で水を同時に蹴って泳ぐのではなく、左肢、右肢で水を交互にかいて泳ぎます。 また、ゲンゴロウが泳ぐときにまったく前肢を使わないのに対し、ガムシはすべての肢を使って泳ぎます。泳ぎますというか、なんなのでしょう。
とにかく、それが僕なんかにはたまらないかわいさを伴なって映るのですが、世間はいったいどうなっているのでしょうか。上述の通り、そんな泳ぎ方をしているので必然的にお尻が左右に振れます。とかげなんかの爬虫類も足を交互に使って進むのでお尻が左右に揺れますよね。 でもまだ彼らにはしっぽがあるので、お尻が左にいったときはしっぽが右にいくのでバランスがとれますよね。
ところがガムシにはしっぽがありません。お尻の先にはなにもありません。だからついお尻を左右に振っているようにみえてしまうのです。トカゲだってきっとしっぽがなかったらきっとすごくかわいいですよ、お尻のところが。
息を吸うときも、ガムシは他の水生昆虫と違ってお尻ではなく頭部と前胸背のあいだから触覚のような呼吸器を水面に出して息をします。簡単に言っちゃえば首から息をするということです。 そしてその呼吸器は首の横にあるので、水面にその呼吸器を伸ばしているあいだはやっぱりどうしても頭が横に傾くことになります。するとやっぱりあいくるしいことになるのです。 よく名前を呼ぶと首を傾ける犬がいるけど、あれと同じです。かわいいです。そしてさらに呼吸しているあいだは今度はお尻が左右ではなく前後に揺れます。またお尻です(笑)。なんなのでしょう。
僕の心をグッとつかんで離しません。とってもかわいいです。ガムシは冬、ほとんどなにも食べずものかげにジッと隠れてなかば水中で仮死状態ですが、これでやっと春を迎えて目を覚ましたといったところでしょうか。
ガムシは水中、上陸中を問わず、よく顔の掃除をします。顔をななめにかしげて前足でおでこのあたりをゴシ、ゴシと擦ります(かわいさ1億万点)。
ゲンゴロウが比較的足をよく掃除するのにくらべ、ガムシは顔ばっかりです(ガムシが足をゴシゴシしているの、見たことあるひといますか?)。顔が命の吉徳人形なのでしょう。がんばってもらいたいものです。
'04年に成功して以来、ガムシの繁殖だけはなんとかかかさずできるようになりましたが、初羽化の瞬間の感動は今でもはっきりと覚えています。
つくりはじめたら最後まで、一度も息継ぎをしません。30分くらいでしょうか。お尻の先からクモの糸みたいなものを出して、それで卵のうをかたちづくっています。
なんて器用なお尻でしょう。ここでもやっぱりお尻です。ああ。
藻類が大好きですが、別に藻でなくてもこういうものや、茹でた菜っ葉でもよく食べます。もちろん肉質なものも食べます。
ガムシは大食漢なので、普通に飼育しているとなにかしら見繕ってあげないとすぐに藻類はなくなり、水草もどんどん食害されて跡形もなくなったり、茎だけになったりてしまいます。
かまってー、というサインなのですね。おーかわいいやつだ、よしよし。
前面にはいかにも出入口のような薄皮の部分があって、そこから1週間ほどで幼虫たちが這い出してきます。
すぐに表に出てくるものもいれば、中でもぞもぞしていてなかなか表に出てこないものもいます。
警戒心からかたまたまなのかよく分かりませんが、そこらへんは虫も動物も人間も変わらないんだな、などと感想を持ちます。
触るとぶにょんぶにょんに柔らかいのに、キュッなどと鳴いて一気に固くなるところなんか、僕なんかには大変にたまりません。キュッて。
参考文献:「Asymmetric mandibles of water-scavenger larvae improves feeding effectiveness on right-handed snails. American Naturalist, 162:811-814 (2003).」
あとは、個人的な経験上から、この写真のような飼い方だとあまりうまくいきません( 実際、上陸前に☆になりました )。
下の写真のように、底になにか敷いてあげた状態の方が断然よいです。 特に、小さな容器で育てている場合、エサの貝は過敏になって容器に張り付いてなかなかはがれなくなるので、底が砂状になっているとガムシも貝が持ち上げやすくて効果的です。
参考までに、下の図はコガタガムシのものですが、ガムシも同様です( by '06 )。個別飼育は調子悪いです。こんなはずではなかったのだけれど('04)。
なんとか4年目してようやく。ようやっとこさの羽化。嬉しい新成虫。上陸からちょうど20日でした。
大型種なのに意外と早いのね。
さて、これをいかに継続するか。やっとあがった土俵の上。どすこい。これからが頑張りどころだと、キリリとひきしまる僕です。