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コバンムシ
コバンムシ。頭部と前胸背のエメラルドグリーンがとても美しい。鉤状になった前肢は短く、複眼は大きく、とてもかわいらしい。
本州~九州に広く分布しているが、局所的で稀。ヒルムシロやヒシが繁茂するような比較的大きな池沼などの安定した水域を好むので、生息環境の減少が絶滅危惧に拍車をかけている。
日本にはコバンムシ科コバンムシ属にはこのコバンムシ1種しかいない。
体長約12mm。
自然下で越冬するコバンムシ
ある年の11月。生息地の水の干上がった岸辺付近で陸上越冬しているコバンムシを掘り返したところ。
掘り返した瞬間は今でもよく覚えています。掘っていたのはコガムシを探すためで、これは千載一遇の奇跡でした。
確認できたのはこの1個体だけでしたが、本種は飼育下でも素直に陸上越冬するため、こうした越冬スタイルを生活史としているのかもしれません。
消えゆくコバンムシ
かわいらしいお顔です。ちょこんとした前肢がいじらしいです。
こうした姿が近い将来、写真や標本でしか見られなくなってしまうかもしれません。
開発による生息地の埋め立てや、外来種によるエサの競合や植生環境の変遷等で、今もひと知れず数を減らしています。
もともと生息が局所的な生き物は、近くに適した生息地もなく、そこを最後の砦と生き抜いている可能性があります。
そこが打撃を受けると致命的になりかねません。
まだ大丈夫だろう、まだ大丈夫だろう、が取り返しのつかないことにならないよう、我々人間はより一層配慮を持たなければならないと思います。
Ilycoris exclamationis
水生半翅目は旧来からあまり食指が動きませんでした。でもコバンムシは入手の経緯やその姿かたちの愛らしさからすぐに惹かれてしまいました。
他の待ち伏せ型の半翅目と違って、コバンムシははるかに敏捷で神経質で、見ていてハラハラする感じが注意を惹いて飽きさせません。
わちゃわちゃとパニックを起こしたような泳ぎ方をしますが、中肢や後肢には豊かな遊泳毛が生えているので、実は泳ぎは上手です。
わちゃわちゃとした感じが伝わるでしょうか。
体が物陰に隠れていないと心配なのでしょうか。見えるところではなかなか一箇所に落ち着いていてくれません。
いつもは落ち葉をたくさん敷き詰めた発泡ケースの中で飼っているので、落ち葉の下に隠れてしまい、なかなかじっくりお目にかかれません。
どうしてコバンムシって言うんだろう
コバンムシのコバンはどこから来たのでしょうか。昔の小判は緑色だったのでしょうか。それとも昔のコバンムシは金色だったのでしょうか。
あ。昔から、コバンを掘り当てるくらいに希少だ、という意味でしょうか。
マルだのホソだのクロだのツヤだのつく種名の頭の部分と違って、科名には比喩的な命名センスが感じられて楽しいものが多いですね。
当時は見たまんまの命名だったのかもしれませんが、時代の遷移のせいでしょうか。コバンと言われても視覚的なイメージよりまず先にそのスケール感に想像力を刺激されます。
コバンムシ、と口にしてみた感じもこれまたなかなか悪くありませんね。
越冬から目覚めるコバンムシ
飼育下で、上陸越冬から目覚めた直後のコバンムシ。うちではだいたい前年の11月頭から翌3月頭にかけて越冬させています。
もう少し長くてもいい気がしますが、うちはヒートアイランドな地域なので、目が覚めちゃうんじゃないかと心配になり、ついつい遅寝早起きになります。 起ると、途端に能動的に動きまわります。
たぶんコバンムシって、相当なビビりなんだと思います。
そういうところも愛くるしいですね。
わちゃわちゃとした感じが伝わるでしょうか。
コバンムシ以外に映っているのは、シマゲンゴロウ、コガムシ、ホソクロマメゲンゴロウです。
越冬明けのコバンムシ等
上記動画の画像版。コバンムシは4匹潜らせて4匹生還しました。
飼育下で越冬をはじめるコバンムシ
こちらは上記とは違う年の違う個体。自然下で掘り出した方のコバンムシ。
11月のある日、これから土に潜っていこうとするところです。
現地ではぐっすり寝ていたところを起こしちゃったので、また寝てくれるか心配でしたが、杞憂だったようで、すんなりと潜っていってくれました。
食べすぎでおなかの膨らんだコバンムシ
翌年3月の越冬明け後。与えたサシを吸い倒しておなかが膨れてすごいことになっています。
よっぽどおなかがすいていたのでしょうね。。
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